建物性能の基礎知識/防火・耐火性能

一般的に木造は火に弱いと考えがちですが、実は案外火に強いのです。それは、木が燃えた時はまず表面が炭化し、その断熱効果により周囲が高温となっても木の内部にまで燃え進むのを遅らせる効果があるからです。 そのため、火災で木造住宅が倒壊に至るまでの時間は柱の太さで決まる事となり、当然太い柱を使った家の方が燃えにくくなり安全といえます。火災の際にもっと怖いのは、新建材から発生する有毒ガスです。今の住宅ではカーテンや壁、床、断熱材など使用する新建材の殆どで有毒ガスを発生する可能性があります。できれば化学系の材料を避け、できるだけ自然素材を使った建材を多く使う配慮が大切です。

火事は火の元に気をつけることが第一。そして万が一出火しても、燃え広がらないつくり、延焼を防ぐ構造にしておくことが大切です。


防火・耐火性能の基礎知識

火災発生から消火に要する時間

消化活動時間

「消防白書」による、殆どの火災は、火災通報から15分以内に消火活動が開始されています(15分以内95%)。

つまり、特に内部出火の場合は、初期段階での火勢の広がりを最小限に抑えて火勢を封じ込め、消防署による消火活動を仰げば、鎮火される可能性が高く、被害を最小限にとどめることが可能といえます。


木は鉄より強度が高い

火災による強度低下

木材の組織には空隙が多くあり、そこに空気をたくさん含んでいるので、鉄に比べ熱を中に伝えにくく、また、酸素が供給される表面からゆっくりと燃えていくので、急激に強度が落ちることはありえません。

火災時における木材の炭化速度は、1分間に0.6mm〜0.8mm程度、仮に消火に要する時間(15分間)、火にさらされても9mmから12mmしか炭化しません。
このため120mm角の柱なら、100mm程度は炭化しないで残るので、柱や梁が倒壊するようなことはありません。
一方、鉄は熱を加えると急激に強度が低下し、変形しやすくなるので重い屋根を支える柱や梁などが曲がってしまい建物が倒壊します。それが如実に示されたのが、アメリカで起きた貿易センタービルの倒壊です。


隣家の建物が火災の場合

仮に隣家に火災が発生した場合、炎は執拗に燃え広がり、軒裏に、屋根に、外壁に襲いかかります。
木造住宅の火災の燃焼温度は1200℃に達し、3m離れた隣家が受ける温度は840℃にも達すると言われています。
また、木材の着火温度は260℃と言われ、それまでの温度に抑えるための対策や隣家との建物のあき寸法を確保するようにすることが重要です。

火災曲線火災時の隣接建物温度


防火・耐火性能

法的な規制と建物種別

住まいに火災が発生した場合、その火災が他の建物に移らないように地域による集団的な規制が設けられ、最低限の防火対策を行なう必要があります。



まず、建設地の防火関係の種別が防火地域か、準防火地域か、それとも法22条地域かによって、建物にかかる規制が違ってくるので、役所にて防火地域が指定されているか調べる必要があります。

住まいづくりの基礎知識用途地域の制限を参照下さい。

防火地域の規制

防火地域の指定で一番厳しい防火地域では、木造の住宅を建てるには建物の規模から考えて難しい地域です。鉄骨造にして耐火被覆を行うか鉄筋コンクリート(耐火建築物)にする必要があります。防火地域は主に都市圏で駅前などの商業地域などに指定されています。

準防火地域では、木造3階建てを建てる場合には、外壁などに耐火時間45分以上(準耐火建築物)の性能が要求されます。
また 木造2階建てでは、延焼のおそれのある外壁や軒裏に耐火時間30分以上(防火構造)の性能が必要です。
尚、これら防火地域 及び準防火地域では、延焼の恐れのある部分の開口部には、ダンパー付き換気扇や網入りガラスのサッシを設け、隣家からの火災の類焼を防ぐ対策が必要です。

法22条地域は、防火地域指定が無い場合の市街地で、延焼の恐れのある外壁部分に準防火性能が必要です。

これらの防火地域・準防火地域の指定が無い地域でも、自ら火災が発生した場合や隣家の火災に耐えられる防火・耐火性能を建物に求めることをお勧めいたします。

準耐火建築物とは

【準耐火建築物の概要】

鉄筋コンクリート造や鉄骨造で耐火被覆を行う耐火建築物より、1ランク耐火性能が低いですが、防火構造より耐火性能が高く、準防火地域で木造3階建てを建てる場合に要求される性能の建築物です。

建物全体の部位(外壁・内壁・床・天井・階段・屋根・軒裏・柱・梁)に耐火性能が要求され、特に延焼のおそれのある部分には隣家への延焼や類焼を防ぐために厳しく制限されています。また、延焼のおそれのある開口部には防火戸等の防火設備が必要です。

【準耐火建築物の性能】  (建築基準法施行令第107条の2)

1,構造耐力上の支障を抑える性能

下表の建築物の部分が、火災に犯されても表内に記載されている時間、構造耐力上支障を招かない変形・溶解・破壊そのた損傷を生じないこと。


内壁(耐力壁のみ)45分間
外壁(耐力壁のみ)45分間
45分間
45分間
45分間
屋根(軒裏を除く)30分間
階段30分間

2,燃焼温度以下に抑制する性能

壁、床、軒裏で延焼の恐れのある部分は、火災に犯されても45分間は、屋内に面する温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない性能に適合すること。(延焼の恐れのある部分以外は30分間)

3,屋外に火を出さない性能

外壁、屋根にあっては、屋内から発生する火災にて45分間は、屋外に火を出す原因となる亀裂・その他の損傷を生じないこと。(非耐力壁の外壁で延焼の恐れのある部分以外は30分間)

準耐火建築物の仕様

準耐火建築物の仕様はこちらを参照下さい。

防火構造とは

【防火建築物の概要】

防火構造の建築物は、準防火地域内の木造建築物(3階建ては準耐火建築物)に要求される構造で、延焼のおそれのある部分の外壁・軒裏・開口部に防火性能が要求され、延焼のおそれのない部分は適用されませんが、防火・耐火性能を確保するためにも建物全ての外壁・軒裏も同じ性能を設けることをお勧めいたします。また、屋根は不燃材料で葺く必要があります。

【防火構造の性能】  (建築基準法施行令第108条)

1,構造耐力上の支障を抑える性能

建物の外壁面の耐力壁が、火炎に犯されても30分間構造耐力上支障を招かない変形・溶解・破壊そのた損傷を生じない性能。

2,燃焼温度以下に抑制する性能

耐力壁以外の外壁、及び軒裏にあっては、火炎に犯されても30分間は、屋内に面する温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない性能に適合すること。

防火構造の仕様

防火構造の仕様はこちらを参照下さい。

準防火性能とは

【準防火性能の概要】

市街地で防火地域 及び準防火地域以外で、行政が指定した地域(一般的に「22条地域」と言ってます)には、延焼のおそれのある外壁に準防火性能が、また 屋根は不燃材料で葺く必要があります。

【準防火性能】  (建築基準法施行令第109条の6)

1,構造耐力上の支障を抑える性能

建物の外壁面の耐力壁が、火炎に犯されても20分間構造耐力上支障を招かない変形・溶解・破壊そのた損傷を生じない性能。

2,燃焼温度以下に抑制する性能

外壁において、火炎に犯されても20分間は、屋内に面する温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しない性能に適合すること。

準防火性能の仕様

準防火性能の仕様はこちらを参照下さい。



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